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嫁 死ねばいいのに
旦那 死ねばいいのに って検索してたこいつ
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何がしたいの?
ある日仕事から疲れきって帰ってくると、さゆりさんがいなかった。
さゆりさんが居たであろう場所は、本と服で埋まっている。
これまた家の照明は全部点けっぱなしだった。

だがおかしい。
さゆりさんがいないのも家中の電気が点けっぱなしなのもよくあることなのだが

犬がいないのだ。

犬の散歩は俺の仕事である。
毎日帰ってきて一緒にコンビニまで行くのだ。
俺を唯一出迎えてくれる犬が・・・どこにもいない。

嫌な予感がした。
部屋を確認してみる。
犬の食器、なし。
犬の服、なし。
犬のベッド、なし。
犬のリード、なし。
犬のおもちゃ、なし。

旅行用のトランクケースとボストンバッグ、なし。

あいつ・・・犬連れて出て行きやがった。
カードと通帳が、物で溢れたテーブルの上に置いてある。

・・・・ええええええええええ

おかしいだろ、俺何かしたっけ?
ソファに腰かけ、煙草に火を点けて考えてみる。
ここ最近、何かあったっけ?
いや、何もなかった。
さゆりさんはいつも通りパソコンいじるか本を読んでいた。
俺はカップ麺にお湯を注いでいた。
それだけだ。
いや・・・・まさか・・・・

「パスポート、どこやったっけ?」

確か3日くらい前にそんなことを呟いていた気がする。

ドタバタと引き出しを漁ってみる。
はい、パスポート、なし。

殺してやる!絶対殺してやる!
もしかしたら携帯に連絡が来てるかもしれないとチェックしてみたが、メールも電話も書置きもなかった。

連絡がついたのは、それから4日も経ってからだった。
毎日時間に空きができれば電話をした。
着歴は軽く100件を超えているはずだ。
ずっと通じなかったのだが、4日目の昼休み、ダメ元でかけてみたら繋がったのだ。

「あきでーす・・・」

眠そうな声で答えたのはさゆりさんの声そのものだったが、”あき”?

「てめークソ嫁!殺してやるから今すぐ帰って来い!」

俺が怒鳴った途端さゆりさんの声はがらりと変わり、「ああ、なんだお前か。」と吐き捨てた。

「何やってるんだよ!?」
「キャバクラで働いてる。」
「はぁ?どこのキャバクラだ!」
「どこだっていいだろーがww」
「犬は?」
「犬?これからサロンに連れて行きますよ?」

ぬぅぅ・・・どこまでも俺よりいい生活を送っているな、犬よ。

「どこに住んでるんだよ?」
「おまえに言ってもわかんねーよ。」
「・・・お前、また良からぬことやってんじゃねーだろーな」
「人がやることに口出すな、来月には帰るよ。じゃーな。」

切れた電話を耳に当てたまま途方に暮れた。
俺の神経も少しおかしいのかもしれない。
別にいいんだよ、キャバクラで働いてようと、なんだろうと。

さゆりさんには俺には知らない繋がりがたくさんある。
知らない、というか知りたくない、いわゆるおっかない人達とのコネが強いのだ。
だからあいつはどこにでも行く場所がある。
俺の知らない場所。俺から離れるために用意する場所。
あいつからしてみたらもしかしたらそっちの方がホームなのかもしれない。
ずっと東京の裏社会にいたんだから。

はぁーっと大きくため息をついてそばにあったゴミ箱を蹴飛ばした。
それを見ていた先輩が心配してくれたが、「帰ったら嫁がいなくて今俺の知らないところでキャバクラやってるみたいです。」なんて言えるわけないだろう?

それから1ヶ月、ほとんど連絡もない状態だった。
「明日、始発で帰るから今日は朝まで遊んでそのまま帰る。」
それを聞いて俺はすぐに都内の某クラブに乗り込んだ。
あいつが朝まで遊ぶと言ったら絶対このクラブだ。

昔俺もよく通ってたもので、セキュリティーのお兄さんが話しかけてきた。
「あれ!ぽっちさん久しぶりじゃないっすか!」
恥ずかしい話、このクラブで俺はMCをやったことがある。
「うちの嫁・・・さゆり来てる?」
「さゆりさん、今日ゲストで入ってますよ。ヒップホップのブースじゃないっすか?」
あのクソ嫁・・・ゲストでクラブ遊びだと?ここで殺してくれるわ!
「ぽっちさんもゲストでどーぞ。ねじ込んできたんですぐ入れますよ。」
「ありがとう。」

セキュリティーに礼を言って中に入る。
このけばけばしい照明も酒の臭いもくすんだ空気も爆音もずいぶん久しぶりだ。
俺がここで調子に乗って・・・あいつをひどく傷つけてから、もう二度とクラブ遊びはしないと誓ったのに。

人ごみを掻き分けて2階のブースに上がろうとすると、さゆりさんがいた。
いい年して派手な格好をして、おっかなそうなお兄さんに絡まれている。
さゆりさんの方は相手にしていないらしく、軽くもみ合いのようになっていた。

イカン、と思い階段をダッシュで登ると-

「てめーしつけーんだよ。お粗末なピーしてるくせに何でそんな自信持ってんだ?死ぬか死ねピーカスがww」

言っておくがさゆりさんは酒が飲めない。
純度100パーセントの下戸である。
酔った相手がよっぽど気に障ったんだろう。

「んだとこのブス!!!」

お兄さんがさゆりさんに掴みかかろうとする。
それでもさゆりさんは蔑んだ目を投げかけて「ブス一人落とせねー粗ピー野郎が喚いてんじゃねーよ、死ねよほら、面白いから。」

ここで俺と他のお客さん、セキュリティーが止めに入った。
1ヶ月ぶりに会ったさゆりさんは、また少し痩せてしまっていたが、いつも通り恥ずかしいやつだった。
殴りかかってきたお兄さんはセキュリティーに連れていかれ、俺らも今夜は出入り禁止になってしまった。

「よう、来てたんだ。」
ガラの悪いさゆりさんがコーヒーを買ってくれて、2人で外でそれを飲んだ。

「お前は相変わらずね。シラフであそこまで言う女は中々いないよ。」

なんかもうどうでも良くなってきた。

「寒いね」

さゆりさんが空を仰ぐ。

「うん、それに始発まであと3時間あるね。」

俺もつられて空を見上げる。

「聞きたくない?」
「何を?」
「この1ヶ月のこと。」
「お前が話してくれるならね。」
「話さねーよwプゲラ」
「じゃあ、いい。」

俺はさゆりさんの横顔を見た。
切なそうな、何をしても満ち足りてないような、そもそも何も求めてないような-
そんな横顔が可愛かった。

結局さゆりさんの知り合いに車を出してもらい、犬を連れて家に帰った。
ちなみにさゆりさんが住んでたのは家賃20万くらいする高層マンションだった。
家賃はタダで貸してもらったそうだ。

家に着いて、久々に家族そろって一緒に寝た。
俺はさゆりさんの手を強く握って。
やっぱりこいつらは、ここにいないとダメなんだ-

随分疲れてたのか、起きたのは昼すぎだった。

「さゆりさん・・・?」

今日は犬はいるが、さゆりさんの姿がまったく見当たらない。
嫌な予感がした。

旅行用のトランクケース、なし。
ボストンバック、なし。
パスポート、なし!

しかし今回は書置きがあった。

『キャバクラでけっこう稼いだのでハワイに行ってきます』

普通1ヶ月ぶりに家に帰ってきて、書置きだけしてハワイ行くか?
バカなの?死ぬの?

もう何も考えたくなくて、犬と一緒にボケっとしてた。

一週間後帰ってきた嫁は、季節外れの小麦色になっていた。

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